そのキスはまるで錆びた月を舐めるような味がして、それが最初で最後のキスだって何処かでわかってた。
傷だらけで継ぎ接ぎだらけの私の心臓を、彼は美しいと云うのです。
組み敷かれて、掻き抱かれても、満たされない私の心はいつか壊れて、師走の不忍池に貴方を沈めることでしょう。
綺麗だね、と笑い掛けても隣に君がいないのは、なんだか不思議な気分です。
追伸、その後変わりないだろうか。来年の春にはそちらに帰る予定です。

幼い頃の私はひとりでもちっとも寂しくなかったし、こんな些細なことで泣いたりしなかったのに。あなたの所為です、
いつか忘れたことも、僕が僕であり、君をこの上なく愛したことさえも忘れたとしたら、この愛をなかったことに出来るのでしょうか。
羨望と嫉妬は紙一重で、欲望と愛情もまたよく似た形をしているから、私はどちらも履き違えてしまった。
人間とは容易く嘘を吐く。それは息をするのとそんなに違いはない。
花底蛇、お前は美しき花が隠し孕んでいる毒蛇すらも臆することなく愛すると謂えるのか。


微笑まないトゥーランドットの初恋。
花盗人の咎。
散るは花か、否か。