スワンメイデン
夜の帳を泳ぐあなたと、わたし
一夜限りの魔法をかけてあげましょ
きみの泣き顔に、欲情
このまま燻るだけなら、いっそ灰にしてよ
遠く見果てぬ蓬莱へ、お前は旅立つと云う
腐り落ちた果実の方が好きだという物好きだって、この世にはいるってことさ
雑音も、残響も、お前の声も、どうか掻き消してください
唯神論者の愚考(僕にとっては彼女こそが、)
プリーズコールミー、マイガール

私が愛していたのは諭吉だけよダーリン
古書の海に抱かれて、絶命
アネモニア・ガール
眠らない森
どうか、ゆめのつづきを私にみせて
喚くほどの愛すらも持ち合わせてはいなかった
斜陽に翳した睫毛
受話器から飛び立つ蝶の群
刃毀れしたナイフはきみのこころによく似ている
許さないで、そしたら私はあなたの中から永劫消えない

ひとりぼっちの国
青嵐に淡ぐ、花錦
境界不明の波打ち際で逢いましょう
あなたが人にはなれないと云うのなら、私が悪魔になってあげましょう
どう足掻いたところで最後はひとりで逝くのだから
トワイライト・サーカスへようこそ
それはまさしく、理想的な恋人の標本だった
乗客は私ひとり、最果てに向かう列車は小さく軋む
箒星に跨って世界を巡った少年自身が、いつしか星になりました
路地裏にて、逢引

それはきっと、自己陶酔の最上級
シニカルキラーと狡猾な少女の美学
愛が軽すぎても重すぎても悪態ばかりのあなた
君を掬う為のスプーンを磨いている
毒婦と聖母と淑女
光しか望めないだなんて、酷く憐れな生き物じゃないか
腐れたばかりの私に優しく口づけて
鴻鵠の夢
リアリズムばかりの世界では窒息するのが常だから
はじまりがあなたならば、おわらせるのもあなたです

もう世界が終わってしまったことを、深海魚たちは知りませんでした
アンドロイド・エレジィ
君はユダ
愛ばかりを食べて、やがては餓死する愚かなきみへ
計算高いヒロイズムの横行
拙いばかりの恋愛ごっこにはもう飽き飽きだ
劣情の残滓を舐め取って
透明標本にしたら、君の心も綺麗に見えるの
バスルームは今日も雨
この世界を閉ざしたら、ぼくだけのきみになってくれるの

君の中で胎児のように丸くなって、ただ朝を待つ
花菖蒲のくちづけ
彼女の指先は、この世で一番やさしいもので出来ている
僕を確立させるに至る絶対的要素が見つからないんだ
優柔不断は蛇をも殺す
マーマレード漬けの瓶から臨む世界
だから、僕は飛びたくなんてなかったんだ
生まれ変わるなら、次は君の心臓になりたいものだ
ひとでなしと雨のヘルツ
ろくでなしと月のワルツ

ひめやかにひそやかにささやかれた、ひみつ
廃園サナトリウムと、蜉蝣と、僕
はだし、ほほえむ
密室、エレベーター、停電にロマンスなんてない
月面の墓標を仰ぐ日々でも
どんな妙薬でもこの熱は冷め遣らない
その愛を紐解くと忽ちゲシュタルトが崩壊する
君の裏側を巡る惑星もあるってこと
最後に見たのはお前の背中、あの時もセーラー服が寂しげにはためいていた
静謐群像

淑女と深い森のジュブナイル
群れる眼光
君の棲家になれたらいいのに
悪魔が囁いた夏の夕暮れ、僕はまだ後悔したまま
窒息理論は必要ですか
悪いおとなになりたいの
風呂あがり、火照る肌、濡れ髪、触れないの
修羅の春
浅瀬の魚はいくら焦がれたところで深海じゃ生きてゆけないものだから
あなたなんて大嫌い、そういうきみがすきでした

シーツと白い花にまみれて、蜜月
騙されたままの幸福をもう一度ください
眠りに落ちるその一瞬だけ、心の底から愛してやろう
千切れる静脈
知識を食べて生きる虫みたいな君だもの(本だけ愛して本に埋もれて、死んでしまえ)
わたしたちを繋いでいた愛は知らない間に失踪する
はじめから愛情などなかったのだ、とは考えないのかね
落ちる惑星
俎上の鯉は静かに目を閉じた
やがて燃え尽きる彗星には君の名を、通り過ぎる衛星には僕の名を

さて、僕の想いが幾千の蝶になって月夜を掻き消したとして
水を遣ってもいつかは枯死する生き物だから
山梔子の花
迷うことすら出来ないちいさな森で
涙を流す剥製美
しあわせなふりをしていれば、いつか本当のしあわせがわかると信じていたあの頃
泣かせて、ごめんね
真昼の月が群青に浚われたから、僕らは罪を犯した
観覧車にふたり暮らし
永遠がないのなら、一体僕は君の何を愛せばいい